Samhita Mukhopadhyay著「The Myth of Making It: A Workplace Reckoning」
ファッション雑誌ヴォーグのティーン向け版「ティーン・ヴォーグ」の編集長を務めたインド系アメリカ人女性が20世紀後半から現在にまで変化しながら続く「働く女性の理想像」の虚構を暴く本。レトロな表紙デザインだけどちゃんと現代のフェミニズムやってる。
著者はもともとフェミニズム系オンラインメディアの編集長を務めるなどフェミニストライター・編集者として活動していたが、紙媒体の販売を停止してオンラインメディアに変更されるティーン・ヴォーグ誌の編集長に抜擢される。ヴォーグ誌といえば高級ファッション誌だが、そのティーン版は以前から性暴力やクィアやトランスの権利、人種差別などさまざまな社会問題についてティーンエイジャーの女の子たちに伝える取り組みを続けており、著者は適任とされた。
ファッション誌の編集長らしく本物のグッチのバッグを持ってさっそうと出勤した著者は、ついにキャリアを登りつめた、成功した、と自分に言い聞かせようとするも、残業に家族のケアに走り回ってクタクタになる毎日は変わらない。女性はキャリアか家庭かどちらかを選ばなければいけなかった時代から「どちらも取っていい」となり、ヘレン・ガーリー・ブラウンの「セックス&シングル・ガール」にはじまりリーン・インだとかガールボスだとかその時々の流行語とともにキャリアも私生活も充実した美しい女性たちのあり方が称賛されるも、第二波フェミニズム到来から50年以上たっても働く女性たちが置かれた状況はそれほど変わっていない。家庭はもちろん、職場にもフェミニズムが必要であることを著者はあらためて訴える。