Carlos Lozada著「The Washington Book: How to Read Politics and Politicians」

The Washington Book

Carlos Lozada著「The Washington Book: How to Read Politics and Politicians

ワシントン・ポスト紙の書評者として長年活動しここ数年はニューヨーク・タイムズ紙でオピニオンライターを務める著者が書いてきた、政治家による本や政治に関する本に関するコラムをまとめた本。

政治家、とくに大統領選挙への出馬を狙える位置にいる政治家たちが書く本は、それぞれ同じような層にメッセージを届けて支持を増やそうとしているにも関わらず、細かい部分で当人たちの価値観や考え方が漏れ出しており、著者はそれを目ざとく見つけ出し指摘する。ヒラリー・クリントンの保守的な家族観、カマラ・ハリスが柔軟なのではなく優柔不断だと見られる理由から、ニュート・ギングリッチらの著書の謝辞に誰の名前がどういう順番で並んでいるかなど、書評家の立場から鮮やかな分析を続ける。トランプ政権の現役高官が匿名で書いたとされる本の内容から著者がどういう地位にいる人物なのかプロファイリングしたコラムは、のちに明らかになった著者とぴったり合致していてすごい。

前著「What We Were Thinking: A Brief Intellectual History of the Trump Era」では「見放された田舎の白人層」「人種差別とアイデンティティ」「MeToo運動」「フェイク」「保守主義」「混沌するホワイトハウス」「民主主義の危機」などのテーマごとにトランプ政権時代に出版されたさまざまな本を網羅し「トランプ時代にわたしたちは何を考えていたのか」を明らかにしたが、本書も期待を裏切らない内容。

取り上げられている本の多くはわたしも読んでいるし、読書の量ではわたしも負けていないけど、目の付け所が鋭くて参考になるし教養のレベルが高すぎて「こんなふうに本を読めるようになりたい」と憧れるばかり。てかこんな本があるならわたしの存在意義って何。