Samantha Stein著「Evil at Our Table: Inside the Minds of the Monsters Who Live Among Us」
刑期を終えた性犯罪者を釈放するのか、それとも社会に対する危険を取り除くために治療施設に強制的に収容するのか、カリフォルニア州の制度に基づいて難しい審査を行う犯罪心理学者の著者がその経験と実態について書いた本。
有罪判決を受け刑務所で刑期をつとめた性犯罪者とひとまとめにしても、すべての人が同じだけ危険なわけではない。もともと特定の状況・特定の相手に対してだけ加害行為を行った人や、反省して二度と再犯しないと決意しておりそれを守ることができる人、あるいは長期にわたる拘禁により再犯する気力や体力を失った人など、多くの場合は釈放後に治療施設に収容するほどの理由がない。しかし中には他者への共感性を著しく欠き、自分の行動によって引き起こされた結果から学ぶことができない人など、再犯の危険が高い人もいる。
カリフォルニア州ではそうした危険な元受刑者たちを、刑期が満了したあとも治療施設に収容する制度があるが、これは人権に対する重大な制約であり、簡単に認められるものではない。刑期を終えようとしている受刑者たちは二人の専門家にそれぞれ別個で審査され、二人の意見が一致しなかった場合は第三・第四の専門家の意見が求められることになっており、著者はその専門家として働く一人。細かく定められた基準を満たしているかどうか判断することを求められ、個人的な印象は排除されるため、本人が過去の犯行を真摯に反省し人生をやり直そうとしているように見えるけえれどデータをもとに判断すると危険であるとして施設収容を提言せざるを得ない場合もある。間違って危険な人を世に放ってしまった場合、罪のない(主に)女性や子どもが被害を受けるが、もしかしたら危険性がないかもしれない人の人生を奪うことに加担してしまうのも恐ろしく、責任は重大。しかも同じ行為をした人でも、裕福な白人なら弁護士を通して司法取引をして軽い罪状で済む一方、貧しい黒人の容疑者は十分な弁護も受けられずにあることないこと有罪にされ、その犯歴をもとに釈放後もより危険だとして自由を奪われる現実もある。
わたしは性暴力サバイバーの側に立った支援活動には長年関わってきたけれど、加害者側というか、加害者の中でも特に危険な層への取り組みについては知らないので、いろいろ学べるところがあった。本書を読む限り元受刑者の収容はかなり慎重に行われておりできるだけ人権侵害を避けようとする仕組みが整っているように見えるのだけれど、わたしの経験上、性暴力や虐待について刑事司法の立場で関わる専門家たちの言うことは「制度上こうなっている、理論上こうあるべき」という話であって実態とは乖離していることがあまりに多いので、信用はしていない。ただおもしろいと思ったのは、著者が自分の仕事について周囲から「加害者と向き合うなんてよくそんなことができるね」と言われることについて、いや加害者たちは(少なくとも加害の部分においては)トラウマを経験したわけじゃないから扱いやすい、それより大変なのはトラウマを経験した被害者たちと向き合うことだ、と言っていて、そーだよみんなもっとうちらの大変さ分かれ>世の中、と思った、