Dahlia Lithwick著「Lady Justice: Women, the Law, and the Battle to Save America」

Lady Justice

Dahlia Lithwick著「Lady Justice: Women, the Law, and the Battle to Save America

トランプ時代に政権に対抗して人権と民主主義を守るために戦った女性法律家たちについての本。トランプ時代の話はもううんざりだよと思ったけど、登場する女性法律家たちの人となりや経歴、どうしてその時その場面にいることができたのかなど詳しい話が読めておもしろかった。著者は最高裁を専門の一つとしているジャーナリスト。

本書で紹介されるのは、トランプが司法長官に指名したジェフ・セッションズ議員が承認されるまでのあいだオバマ政権から引き継いで司法長官代理として務めるはずがトランプのムスリム移民入国禁止令に反対して解雇された「最初の抵抗者」Sally Yates、その入国禁止令が下されるのを察知し既に渡航中の移民や留学生たちが空港で拘束されるのに備えて全国の弁護士を組織化したBecca Heller、カウンタープロテクターが殺されたシャーロッツビルの極右集会(トランプがレイシストと反レイシストの「どちら側にも良い人はいる」と表現したやつ)の責任者に対する法的追求を行ったRobbie Kaplan、政府に収容されている17歳の少女が妊娠中絶を受ける権利を守るために戦ったBrigitte Amiri、連邦判事による性暴力を告発した女性法律家たちなど。

もちろんトランプと戦った法律家は男性にもたくさんいたけれど、もともと人権や社会的公正のための法務を専門とする弁護士は女性のほうが多く、トランプ時代には彼女たちが移民や女性やクィアや人種的マイノリティの権利を守るために最前線で戦った。その結果トランプは2016年の選挙でヒラリー・クリントンに対して使ったスローガン「Lock Her Up(彼女を監獄にブチ込め)」を彼女たちに対しても連発し、トランプが最高裁判事に指名したブレット・カヴァナーによる性暴力を告発したクリスティン・ブラジ・フォード氏は脅迫を受けて何度も家族とともに引っ越すことになった。

この紹介文を書いている今日、ちょうどジョージア州で上院議員選挙の決選投票が行われ、民主党のラファエル・ワーノック議員が再選を果たした。これで民主党は2020年と2022年のジョージア州での上院選挙で3連勝したことになるが、共和党が有利なジョージア州で民主党が勝つためにこれまで選挙に参加していなかった人たちに参加を働きかけその土台を作ったステイシー・エイブラムズも本書で紹介されている女性法律家の一人。彼女一人の功績とするのは良くないし彼女自身も反対しているけど、選挙に参加しない人はどうやっても参加しないと諦めていたこれまでの選挙専門家の考えを受け入れず行動に移した彼女を含め、この本で紹介されている女性法律家たちはその場しのぎではなく長期的な視野を持ったうえで目の前の問題に取り組んでいるのがすごい。