Richard Rothstein著「The Color of Law: A Forgotten History of How Our Government Segregated America」

The Color of Law

Richard Rothstein著「The Color of Law: A Forgotten History of How Our Government Segregated America

しばらく前から読もうと思いつつ忘れてたけど、最近「Franchise」を読んで思い出したので読んだ。人種による住居の棲み分け、とくに黒人と白人の住居隔離が、双方の自主的な棲み分けや、あるいは経済的格差によって自然に生まれた結果ではなく、連邦政府や自治体の積極的な介入によって生み出されたものであることが、これでもかと例示されている。わたしがよく知っているポートランドやシアトルについてもさらに学ぶことができた。

最高裁の判例では、住居の人種隔離は政府の政策によって生まれたものではなく民間の差別や経済格差によって生まれたものなので、積極的に是正する責任は政府にはない、とされている。著者はその判例が事実誤認に基づいているとして説得的に反論。法律や政府の規則によって人種によって入居できる地域が決められたような例も多数あるけど、そういった直接的なものに限らずとも、たとえば黒人の入居を認めないような民間の契約を裁判所が有効と認めて強制執行するなど、人種隔離に対する政府の直接の責任は明らかだと。

人種隔離政策は20世紀後半になって撤廃されていったけど、戦後の住宅ブーム、白人専用に作られた郊外の発達、そしてそれらを元にした中流家庭の住居所有と資産形成から黒人社会は排除されてしまった。それは現在に至るまで、取り返しのつかない経済的・社会的格差として影響を残している。住居の隔離とそれによる経済格差は政府の一貫した不法行為によって生み出されたものなので、同じくらいアグレッシヴな是正措置を取るべきだ、という著者の主張に納得。奴隷制から続く政府の不法行為に対する賠償の方法を真剣に検討すべき。