Marcia Catelain著「Franchise: The Golden Arches in Black America」

Franchise

Marcia Catelain著「Franchise: The Golden Arches in Black America

マクドナルドをはじめとするファストフードレストランと20世紀後半以降の黒人コミュニティの複雑な関係についての本。公民権運動が一定の成果を出したあと指導者の相次ぐ暗殺などにより行き詰まり、ブラックナショナリズム、そしてそれらへの応答として生まれた(そしてニクソンによって奨励された)ブラックキャピタリズムの思想——起業を通して黒人の富を創造しコミュニティの自立を目指す立場——、暴動などの結果、白人が逃避し荒廃したインナーシティの立て直しを図る政府、そして白人経営者が店を開こうとしない地域でも利益を得たいマクドナルドなどフランチャイズ方式の企業の利害などが複雑に絡み合った結果、黒人がフランチャイジーとして黒人コミュニティで経営するファストフード店が展開された。

白人の多い地域では黒人経営者は開店を許されないなど差別があったり、黒人が開店できる地域は治安が悪かったり保険料が高かったりと悪条件があるなか、それらの店舗はコミュニティセンターとしての機能を担いつつ、白人コミュニティの店舗より高い利益を出すところもあった。しかしそうした成功例がある一方、フランチャイズ本社が利益の大半を持っていってしまう構図は変わらないし、新鮮な食料品が手に入るスーパーなどがない地域においてファストフードは黒人コミュニティの健康危機の原因と名指しされるなどの問題は解決できない。

黒人フランチャイジーの提案を受けてマクドナルド本社がチキンサンドイッチをメニューに加えるも、骨無しのチキンとマヨネーズとレタス合わせるレシピが黒人コミュニティの失笑を買ったみたいな、マクドナルドが黒人を消費者として狙いつつ思い切り外すエピソードが個人的にはおもしろかった。