Prisca Dorcas Mojica Rodríguez著「Tías and Primas: On Knowing and Loving the Women Who Raise Us」
ニカラグア生まれで米国マイアミ在住のラティーナ作家による二冊目で、祖国に残した親戚をはじめ著者を育ててくれた女性たちについての本。前作「For Brown Girls with Sharp Edges and Tender Hearts: A Love Letter to Women of Color」に続き、自分の経験と大学で学んだフェミニズムや人種・階級についての理論を組み合わせた内容。
著者の親戚はニカラグアだけでなくアメリカやその他のいくつもの国に散らばっているけれど、お互いを訪れるのは簡単なことではない。ニカラグアの貧しい人たちがアメリカ行きのビザを入手するのは困難だし、そうでなくとも旅費を貯める余裕もない。アメリカに移住して必死に働けば成功できると思っていたけれども、実際にはどれだけ働いても収入は増えず、アメリカ国内にいる別の親戚を訪れるだけでも大変。そういうなか、家族や親戚の女性たちが直面しているさまざまな困難を、著者はジェンダーや人種、階級といった概念をとおして分析し、女性同士が競わされお互いを牽制させられている事実を突きつける。
女帝として一家に君臨しているように見えて実は孤独に悩み健康上の不安を誰にも打ち明けられなかった人や、クィアであるせいで親戚一同から爪弾きにされていた女性、同じ家族でも肌の色が濃いか薄いかで学校に通わせてもらえるかどうか別れてしまった姉妹など、さまざまな女性たちの存在に触れられるが、興味深かったのは著者の親戚や一家が属する移民コミュニティで広まってしまうマルチ商法についての部分。上記のとおり、移民たちの多くは必死に働けば成功できるというアメリカンドリームを信じて移住してきたけれども、現実には日々の生活に追われるばかりでどれだけ働いても苦しいまま。そういうなか、成功する秘訣としてマルチ講やマルチ商法の誘惑が入り込むと、それは親戚やコミュニティ全体に一気に広まる。しかしもちろん実際に成功できる人はほとんどおらず、それぞれの人が失敗者として、そして周囲の人に広めてしまった加害者として恥の意識を抱えていくことになる。アメリカンドリームとそれを追い求める移民たちを食い物にするマルチ商法のコンボが怖すぎる。
前著に続き、登場する女性たちに対する愛に溢れた内容であり、アメリカにおけるラティーノ・ラティーナ(本書ではラティーネというジェンダーニュートラルな新語を採用しているけど)の声を拡散する活動をしている著者ならではの内容で安心して読める。