Peter Mcindoe & Connor Gaydos著「Birds Aren’t Real: The True Story of Mass Avian Murder and the Largest Surveillance Campaign in US History」

Birds Aren't Real

Peter Mcindoe & Connor Gaydos著「Birds Aren’t Real: The True Story of Mass Avian Murder and the Largest Surveillance Campaign in US History

1950年代にドワイト・アイゼンハウアー大統領が承認していらい脈々と続いている、鳥に見せかけたドローンで市民の生活を監視する政府の極秘プロジェクトを、リークされた政府史料などを引用しつつ暴き立てる本。という体裁の陰謀論のパロディ本。著者の一人Mcindoeは2017年にトランプ支持派のデモに「鳥は偽物だ」というプラカードを掲げて参加するというパフォーマンスをしたところバズり、陰謀論の広がりにうんざりした人たちの支持を得た。

アメリカ国内で見かける鳥は全て偽物で実際には監視ドローンである、という主張は実際に存在する陰謀論と比べてそれほど突拍子もないというわけでもなく、じゃあわたしたちが食べている鶏肉や卵はなんなのかとか、鳥の糞をかけられたがどうなんだといった疑問に答える部分は陰謀論のパロディとしてよくできているのだけど、序盤がピークでその先どんどん弱くなっていく。陰謀論をパロディするだけでなく市民監視への批評にもしようとするあまり、現実からの乖離度合いが足りず、パロディとしてのキレが落ちてしまっているように思う。アメリカの歴史についての解説ではパロディにしていない部分で歴史観が浅くて冷めるし、歴代大統領についておもしろおかしく書こうとしている部分もコメディとして弱い。コンセプチュアル・アートを一冊の本にしたらこんな風に残念な感じになるんだなあと。

てゆーか、たしかに面白いパフォーマンスだけど、こんなことやって楽しんでいちゃ駄目なステージでしょもう。