Perry Carpenter著「FAIK: A Practical Guide to Living in a World of Deepfakes, Disinformation, and AI-Generated Deceptions」
人工知能(AI)を悪用して作られるさまざまなフェイクニュース、偽画像や偽動画、偽音声が氾濫しつつあるなか、どのようにして偽情報や偽メディアに騙されず真実を見抜くかという内容の本。
著者はサイバーセキュリティ関係者で、当人としてはAIに大きな期待を寄せつつ、その悪用について警告する。各章のはじめにはディープフェイクが当たり前になった世の中(つまり今の社会)で起きるさまざまなトラブルのシナリオが提示され、AIの悪用についてあまり知らない人にとってもわかりやすくその危険が理解できるようになっている。
ところで本書でも触れられているけれど、もっともらしい偽情報が簡単に捏造できることが周知された結果、本当の犯罪や不正の証拠や事実に基づいた報道まで「フェイクだ」と誤魔化す人たちがアメリカやロシア、イスラエルなどの大統領をはじめ大勢登場してしまっており、また自分の政治的主張に都合の悪い情報はフェイクと決めつけ自分に都合の良い情報だけを見つけてきてそれを信じ込む「自分で調べた」自称情報強者たちを生み出している。タイトルにもあるように本書が呼びかける内容は個人がフェイクに騙されないためのアドバイスが大半だが、こうした事実を含め、正直いまの状況は一般の人たちがメディアリテラシーやAIリテラシーを身に着けて自衛できる限度を超えているように思う。