Paul Baker著「Camp!: The Story of the Attitude that Conquered the World」
過剰さ、誇張、人工的、悪趣味、アイロニー、ドラァグやゲイコミュニティなどと結び付けられて語られてきたキャンプの感受性の歴史と現代についての本。60年前にスーザン・ソンタグが「《キャンプ》についてのノート」を執筆していらい語り尽くされてきたトピックにあえて取り組んだ、恐れ知らずな著作。
18世紀のフランス宮廷の派手な衣装からアメリカの奴隷たちが生み出した抵抗のケークウォーク・パフォーマンスやそれに源流を持つボールルーム・カルチャー、ゲイカルチャーのセンシビリティから現代のドナルド・トランプのパフォーマンスまで、キャンプ的な表現や感受性の歴史をたどりつつ、政治性の欠如と過剰の同居、意図的なキャンプとそうでないもの、歴史的な流れによってキャンプでなくなったりキャンプになったもの、よく見ればキャンプなのにキャンプだと見られないものなど、キャンプについての話がたくさん。サラ・ペイリンがキャンプだと言われれば納得できるけどドナルド・トランプがキャンプだというのは盲点だったかも?あとソンタグのリストが今見るとだいぶ現代と異なる感覚だったり、彼女以降の「キャンプについての学問的な議論」がバトラーに見られるようにそれ自体「意図せざるキャンプ」になってるのとか、改めていろいろ考えさせられる。でもまあ「今更?」という気はやっぱりしている。