Pam Houston著「Without Exception: Reclaiming Abortion, Personhood, and Freedom」
さまざまな賞を受賞した作家の著者が、60の短い章(たった一文だけの章もある)を通してアメリカで妊娠中絶の権利が保障されていた49年5ヶ月と2日に思いを馳せ、妊娠中絶や女性の権利をめぐる政治的な動きやその影響、著者自身が生き延びた性的虐待や望まない妊娠と中絶の経験、母との関係と母になることを拒んだ自分の人生、ジェンダーフルイドの自認などに触れる、自叙伝でありエッセイであり政治的分析でもある本。
妊娠中絶が憲法上の権利として認められていた49年5ヶ月と2日は、著者が初経を経験してから閉経するまでの年月とほぼ一致しており、彼女の人生そのものが女性が権利を獲得してから失うまでの歴史と合致している。妊娠中絶の権利を剥奪する判決に反対した判事らの文章や妊娠中絶にアクセスできなくなったせいでどのような被害が起きているかというデータも引用しつつ著者自身の人生ともリンクさせており、短いけどとてもパワフル。女性や性的マイノリティの人たちをはじめ、多くの人たちが最近の政治的な動きによって失ったものが何だったのか考えさせられる。