Megan Goodwin & Ilyse Morgenstein Fuerst著「Religion Is Not Done with You: Or, the Hidden Power of Religion on Race, Maps, Bodies, and Law」
無宗教の人や「特定の信仰を持たないけれどスピリチュアル」な人たちが増えるなか、それでもわたしたち全員にとって宗教は他人事ではないことを指摘する本。著者は宗教学で博士号を持つ二人組で、宗教についてのポッドキャストを運営している。
宗教改革を経た欧米では現在、宗教とは人が何を信じるかという個人的な問題だと考えられている。しかし実際には、宗教とは文化的な行為であり、社会を理解する枠組みであり、権力の問題でもある。地図やカレンダーなど身近なものから、わたしたちが身体や自由をどう理解するかまで、あるいは「なにが宗教か」という理解についてまで欧米中心主義的に解釈されるように、宗教の影響はわたしたちを常に囲っている。そしてキリスト教ナショナリズムの政治的覇権に見られるように、社会のなかで宗教は人種主義や性差別などと結びつき、それを自然に見せかける役割も負っている。
宗教は個人の選択だけの話ではなく社会の権力の問題であり、だから自分は無宗教なので関係ありません、で済む話ではない。キリスト教ナショナリズムやその一部であるキリスト教シオニズムの脅威がますます深まるいま、宗教の社会的意味についてきちんと考えられる必要がある。