Matt Parker著「Love Triangle: How Trigonometry Shapes the World」
数学オタクのコメディアン・YouTuberが三角形に対する愛を語る本。普通「ラブ・トライアングル」といえば恋愛における三角関係のことだけど、本書はまっすぐに三角形ラブ。サブタイトルは三角関数に触れているけど、実際に三角関数が登場するのはかなり終盤なので苦手意識がある人も読んでみて。
三角形はこんなにすごいんだと、設計や建築における役割や虹の作られ方、宇宙空間を漂う物体を爆弾で吹き飛ばす実験、小さな定規で東京のスカイツリーの高さを図る方法など、おもしろい話題がいろいろ続いたあとで、ようやく「ここまで書いたことは三角関数を使えば全部めっちゃ簡単になるよ!」という話になって、やり口が鮮やか。そこからサイン波は自然界のこんなところにもあるよ、という話に続いて、正六角形やその他さまざまな幾何学的な図形や立体に浮気したかと思うと最近発見されて話題となったアインシュタイン・タイルにまで話が及び、「三角形ラブじゃなかったの?お前なんでもいいのかよ!」と思ったけど、おもしろいからわたしは許す。三角形が許してくれるかどうかは知らない。
あと著者は、イギリスのサッカー(ていうかフットボール)場を指す標識に描かれたサッカーボールが正六角形だけで作られた実際にはありえないデザインであることを指摘し標識の変更を要求するもそれが通らないと、錯視を利用して正六角形だけで作られたように見えるボールを実際に作ったり、初期の3Dゲーム「DOOM」が背景を高速にレンダリングするためにパッケージに含んでいた三角関数の表(あらゆる角度について三角関数をあらかじめ計算した結果を並べた表)に間違いがあることを発見して修正させるなど、オタク的なこだわりと行動力がすごい。