Jasmine L. Harris著「Black Women, Ivory Tower: Revealing the Lies of White Supremacy in American Education」

Black Women, Ivory Tower

Jasmine L. Harris著「Black Women, Ivory Tower: Revealing the Lies of White Supremacy in American Education

黒人女性社会学者の著者が自身の経験を踏まえつつ、学生や教員として黒人女性がアメリカの大学、とくにエリート大学で直面する困難について語る本。

著者は博士号をミネソタ大学で得て現在はテキサス大学サンアントニオ校でアフリカン・アメリカン研究を専門としているけれど、本書でもっとも力が入れられているのは学部生として過ごした名門私立大学のヴァッサー大学での経験。ニューヨーク市から北に向かった田舎にある小さな元女子大学(1969年から共学化)で、当時男子校だったイェール大学の学生たちが「近くに女性がいない、デートしてみたい」と騒ぎ出した際に「だったら女子大を近所に移転させたらいいじゃん」と、あくまで共学化は避けたいイェール大学当局によって目をつけられたのがこの大学なのだけれど、つまりまあイェールと格があうくらいに当時の女子大のなかではエリート校だったところ。

著者はがんばって試験に合格し入学したけれど周囲に黒人は少なく、友人となった白人たちは同じ大学を卒業した母親を持つ人たちが多く、かれらは卒業生の子どもということで優遇措置を受けていた。しかしヴァッサー大学が白人以外の入学を認めたのはそれほど昔の話ではなく、同世代の黒人で卒業生の親を持つ人は皆無。すなわち卒業生の子どもを優遇することは階級とともに人種による差別だった。さらに白人の学生たちはそれだけでなく、大学のカルチャーや寮での生活、勉強方法などについても親や周囲から受け継いでおり、それだけでも著者より有利であるばかりか、著者はその場にいても学生ではなく清掃員などのスタッフだとみなされたりする。のちに著者が博士号を取って大学で授業を受け持つようになってからも、なにかのきっかけで母校を訪れると卒業生だとは思ってもらえず部外者扱いされがちだったり。

そういう話からはじまり、本書は著者自身の経験だけでなくほかの黒人女性たちの経験を紹介して、大学のあり方がどのように黒人女性を不利に扱っているのか論じ、支援の拡充とともに黒人女性同士の支え合いの価値を訴える。