Mary Frances Berry著「Slavery After Slavery: Revealing the Legacy of Forced Child Apprenticeships on Black Families, from Emancipation to the Present」

Slavery After Slavery

Mary Frances Berry著「Slavery After Slavery: Revealing the Legacy of Forced Child Apprenticeships on Black Families, from Emancipation to the Present

奴隷制が撤廃されたあとのアメリカ南部で、年季奉公制度の名目で続けられた「奴隷制の後の奴隷制」の歴史を明らかにする本。

南北戦争終結後に成立し奴隷制を禁止したアメリカ憲法修正13条には「犯罪により有罪判決を受けた人への刑罰としての隷属や強制労働」という例外規定があることはNetflixで配信され今ではYouTubeでも全編見ることができるドキュメンタリ映画「13th」などによって広く知られるようになってきた。本書が紹介するのはしかし、それとは別に、年季奉公制度、あるいは職業訓練の名目で自由になったはずの黒人たちが拘束され白人のための労働を強要されてきた事実。

こうした制度の対象となったのは、多くは法的に孤児とみなされた黒人の子どもや若者たち。かれらの中には奴隷制の時代に所有者によって家族をバラバラに売り払われたり借金のカタに取られたり遺産分与で引き離された人たちもいれば、奴隷制度のなかで黒人奴隷同士の結婚や法的な家族の形成が認められていなかったのをいいことに実際には家族がいるのに孤児だと決めつけられた人もいたが、白人の元奴隷所有者たちに引き取られ、面倒を見る、仕事を教える、という口実のもと、実質的に奴隷であるかのように黒人の子どもたちの身柄が売買され、過酷な労働を強要された。これは当時に限った話ではなく、実のところ今でも制度として残っており、機会に恵まれない(主に非白人の)子どもたちに機会を与える、職業訓練を行うという口実で小中学校に通う年齢の子どもたちを人材不足の農場や屠殺場で働かせようとする制度が実際にある。しかもそれは南部だけに限らず、わたしが住むワシントン州でもそうした制度を合法化しようとする法案が議会に提出されていたりするので油断できない。人種差別的な刑事司法制度による黒人の大量収監の実態とならび、こうした事実は奴隷制が過去のものではなく現在にも続く人種階級制度の原形であることを示している。