Malaika Jabali著「It’s Not You, It’s Capitalism: Why It’s Time to Break Up and How to Move On」

It's Not You, It's Capitalism

Malaika Jabali著「It’s Not You, It’s Capitalism: Why It’s Time to Break Up and How to Move On

黒人女性ジャーナリストで弁護士の著者が、資本主義を約束を守らず拘束したがるダメなパートナー(明らかにボーイフレンドっぽい描写)にたとえ、資本主義をふって社会主義に乗り換えることをユーモアとともに推奨する本。

2011年のウォールストリート占拠運動や2016、2020年のバーニー・サンダースの選挙運動に影響を受け、医療保険制度や教育制度などの改革を目指す若い社会主義者の本という点では最近紹介したAmber A’Lee Frost著「Dirtbag: Essays」と共通点があるけれど、ジャーナリスト・法律家としてレイシズムと経済格差の問題に取り組んできた黒人女性である著者は、キング牧師やドロレス・ウエルタ氏をはじめ黒人やラティーノ、その他の非白人や女性たちによる資本主義への批判を積極的に取り上げ、かれらの運動の延長線上に自身が考える社会主義を位置づける。ブラック・パンサー党がかつて実践し、コロナ禍においてその重要性がさらに注目された相互扶助的な活動が政府による福祉制度を補完するだけでなくその変革に向けられていることを評価している点で、本書は安心できた。

細かいイラストやレイアウトなどKayla E.さんによるデザインの面でもフレンドリーで読みやすく、ともだちと恋バナをしているような感じで資本主義との決別と社会主義とのデートを勧めてくる著者の意図にぴったり。バーニーはその主張をきちんと聞いた人には人気だけど、かれ自身あんまりプレゼンテーションを工夫しないというか、工夫すること自体を隠避している感じなので、こういう読者に歩み寄った社会主義の本はあっていいと思う。