Martha Barnette著「Friends with Words: Adventures in Languageland」

Friends with Words

Martha Barnette著「Friends with Words: Adventures in Languageland

公共ラジオやポッドキャストで言語についての番組を20年以上続けている著者が、言語への愛と自身の過去を綴る本。タイトルは「ワーズ・ウィズ・フレンズ」(直訳すると「ともだちとの口喧嘩」だけど、ともだちと対戦できるワードパズルのアプリの名前でもある)のもじりで、「言葉とともだち」。

著者と同じく英語の文法や用法、語源の話題が好きなわたしはこのタイトルを見て、言葉についての蘊蓄が書かれているのかな、まあそういう本は結構読んでるしあんまり新しく知ることはないかも、と思ったけど、めっちゃ新たに学んだことが多かったしおもしろかった。衝撃。最近ちょっと人気が出たポッドキャストのホストやインフルエンサーなんかが本を出すことが多いんだけど、やっぱ本物のラジオで長年番組を担当していたプロはレベルが違うわ。

序盤は著者が語源に興味を抱いたきっかけの話からはじまり、個人の名前や神話から発生した単語や、人々に広く信じられているけれど事実とは異なる語源まで、語源についての話題が多め。たとえばギリシア神話から取られた「ucalegon」という単語には「家が燃えている隣人」という意味があるみたいだけど、絶対通じないので消防署に通報するとき使うのはやめたほうが良さそう。そこからアメリカ各地の独特な単語や用法について各州ごとに紹介していくロードトリップに著者の過去が重ねられていく。

レズビアンの著者が現在のパートナーと出会った話がいい。彼女はもともとラジオのリスナーで、番組に電話でコメントを寄せたことがあった。それから二年後、番組のなかでたまたま著者が過去のパートナーについて言及することがあり、そのとき元パートナーのことをsheと呼んだことがカミングアウトだと話題に。その直後あるイベントに参加した著者に現在のパートナーが「二年前にこういう話題でラジオに出してもらいましたけど、覚えてます?」と話しかけ、著者に電話番号が書かれた紙の切れ端を渡していったことが付き合うようになったきっかけ。なにそれかわいい。そして時代とともに「結婚」や「妻」の意味も変わり、著者は彼女と結婚しました、というオチ。てゆーか著者、公にカミングアウトする以前からYer Girlfriendというレズビアンロックバンドでキーボード奏者をしていたということで、別にラジオで意識してカミングアウトしたわけではなかったらしいけど。