Liz Theoharis & Noam Sandweiss-Back著「You Only Get What You’re Organized to Take: Lessons from the Movement to End Poverty」
キング牧師が晩年に創設した「貧困者による運動」を2018年に復活させた一人である牧師と彼女の同僚が、貧困を根絶するための多人種・多業種の人たちによる運動の歴史とその成果を伝える本。
「自分たちが得たものは運動を起こして勝ち取ったものだけだ」というタイトルが内容をほぼ完全に要約していて、それ以上紹介のしようがないのだけれど、こういった運動は勝っても負けても歴史には残されず、せっかく実現したさまざまな成果もはじめからそこにあったかのように扱われたり、いつの間にかまた奪われたりしているので、歴史をきちんと学ぶことは大切。
本書でも触れられているように、パンデミックからの復興を口実としてバイデン大統領が提案したビルド・バック・ベター政策はその大部分が党内の二人の上院議員による抵抗のせいで実現しなかったけれども、それでも実現した部分だけでも史上まれにみる貧困の縮小に一時的に成功しており、また同時期にアマゾンやスターバックスなど新しい分野で労働運動が広がるなどの希望もあり、十分な社会的機運さえ整えばアメリカの貧困をなくすことは不可能ではないことを思い出させてくれる。もちろんその機運は、普段からの運動や取り組みがなければ永遠に来ないし、それを掴むこともできない。
