Lionel Barber著「Gambling Man: The Secret Story of the World’s Greatest Disruptor, Masayoshi Son」
欧米で初となる(という触れ込みの)ソフトバンク創業者・孫正義氏の伝記。
佐賀県で在日朝鮮人家庭の次男として生まれアメリカ留学を経て起業、1990年代から無茶苦茶な投資を繰り返し何度もアホみたいな浮き沈みを繰り返し最近ではトランプ大統領就任にあわせてOpenAIなどと共同で78兆円のAIファンドを発表するなどの経歴は、おそらく日本の読者のほうが詳しいだろうし、日本語で書かれたものでいくらでも読めると思うのでわざわざ説明をしない。
わたしがおもしろいと思った部分は、能力があっても在日朝鮮人(のちに日本に帰化)であるせいで大企業に就職することもできず、事業を起こしても大手銀行からの融資が十分に受けられなかった父親を見てきた孫正義氏が、アメリカの、しかも東海岸の既存産業と異なる文化のあるシリコンバレーに活路を見出し、行動力と運でうまく成功にこぎつけた点だったり、そういうなかサウジアラビアの国家ファンドや中国の大富豪、そしてアメリカでは(独占禁止法を実際に執行するオバマやバイデンを嫌い)トランプ周辺に接近していろいろ怪しげなことをして投資額を膨らませては直感で巨額のギャンブルをして何度も破綻しかけながら生き抜いたあたりで、最初のうちは「ああ、シリコンバレーの文化にはこういう良い面もあるなあ」と思ったけど次第に「いやいやこんなの許しちゃダメでしょさすがに」という思いが強くなってきた。てか78兆円ってなに78兆円って。
孫さんの元側近として昨年自叙伝「The Money Trap: Lost Illusions Inside the Tech Bubble」を出版したAlok Samaさんが本書に登場してなかったら笑えるな、と思ったけど、一応ちゃんと登場してた。でも本人が言っていたほど重要な役割ではない感じ。まあWeWorkがダメだと最初から分かっていた、という本人の先見の明が本当なら、孫さんに意見を聴いてもらえなかったことになるわけだし。