Laila Mickelwait著「Takedown: Inside the Fight to Shut Down Pornhub for Child Abuse, Rape, and Sex Trafficking」

Takedown

Laila Mickelwait著「Takedown: Inside the Fight to Shut Down Pornhub for Child Abuse, Rape, and Sex Trafficking

世界最大のポルノ動画サイト、というより世界で最も人気のあるウェブサイトの一つであるPornhubを「人身取引ハブ」と名付けて閉鎖に追い込むための活動をしている著者による本。Pornhubはユーザが投稿した動画を掲載して検索できるようにした「チューブサイト」と呼ばれるタイプのポルノサイトの一つで、被写体の同意を得ていない動画や著作権者の許可がないまま投稿された動画が大量に掲載されているとして問題とされている。

著者は自分は合法的なポルノ動画に反対しているわけではないとして、Pornhubが子どもの性虐待動画やレイプなど性暴力の動画、隠し撮り動画などを放置していることを批判しており、合法的なポルノ出演者やポルノ制作者のたちも自分たちの作品を無許可で投稿して金儲けしている人たちを放置するPornhubに怒っている、と書いているが、彼女は自分の団体を設立する以前、違法な性暴力動画だけでなく成人の合意に基づく合法的なポルノ動画にも反対しているキリスト教右派系の団体で働いており、今もそうした団体と連携して運動を進めている。その運動は、Pornhubのように性暴力動画を放置している無責任なサイトだけでなく、成人の合意に基づいて制作されたポルノ動画を掲載しているサイトやそれらのサイトを通して自分が出演した動画を販売している出演者たちを、金融機関やソーシャルメディアからの排除などさまざまな形で圧迫しているが、著者はポルノ出演者にもPornhubに怒っている人はいる、という事実だけを挙げ、かれらが彼女の運動に対しても怒っていることに向き合っていない。それだけでなく、著者は「反人身取引」を掲げた自分の運動が、主に反ポルノ・反性労働・反同性愛・反妊娠中絶の立場に立つ人たちによって支えられていることを否定するだけでなく、そうした批判はPornhub関係者が広めているデマだとほのめかしている。このように著者は、自らが宗教右派から距離を取っているかのように上手に見せかけており、あまり反性的人身取引運動について知らない人が読んだらあっさり騙されてしまいそう。

Pornhub関係者による著者への攻撃の最も深刻なものとして、著者はPornhubを批判するために自分で子どもの虐待動画をアップロードして「こんなのがあった」と騒いでいるのだとか、Pornhubで虐待動画を大量にダウンロードして保存しているというものがある。著者はもちろんそれらを否定しているが、Pornhubにどれだけ虐待動画あるのか証明するためにわざわざ子どもの性虐待動画を探すためのキーワードを多数使って検索し、それらの動画を観て、証拠として子どもの顔をスクリーンショットしている(裸の体や性的行為が写り込まないようにしている、とのこと)と書いていて、うーーーーーん、そうしなければ虐待動画が放置されていることを指摘できないのは分かるんだけど、正直きもちわるい。よくそんなことやる気になったなあと思うし、「性虐待動画を駆逐するため」にそれらの動画を毎日わざわざ狙って探して観てます、捜査機関でもなんでもなく個人で、と言われてもめっちゃ引く。

Pornhubは本当に最低最悪のサイトで、子どもの性虐待動画を削除するよう被害者や警察がコンタクトしても無視するし、削除しても動画だけ消してタイトルやコメントを残すことで検索エンジンに引っかかるようにしたままにするし、明らかに子どもの虐待や性暴力を示すタイトルやタグの動画をお勧めしてくるし、出演者の同意だけでなく投稿者に投稿する権利があるかどうかの確認すら取らないどころか、投稿者がどこの誰なのかすら確認しようとしてこなかったし、その他いろいろあって、こんなサイト潰されて当然だろとは思うんだけど、反ポルノ運動は性暴力被害者や出演者の権利に配慮したサイトとそうでないサイトを区別せず全部まとめて叩き潰そうとしてくる。その結果、生き残ることができるのは結局、資金が豊富で暗号通貨も扱え国境を超えて活動できるPornhubのような大手業者だけで、個々のポルノ出演者や小規模な業者が淘汰され、さらに状況が悪化しているんだけど。

ほかにもまあ、反性的人身取引運動の業界ではいろいろこの本の深刻な問題点がいくつか噂されているんだけど、既に追っているメディアもあるみたいなのでここでは書かないでおく。