Kristi Coulter著「Exit Interview: The Life and Death of My Ambitious Career」
書籍やCDなど物理的メディアを扱うオンラインストアから現在の多角的な巨大企業に変貌しつつあった時期にシアトルに移住しアマゾンで働いていた著者がアマゾンを退社するまでの経験を書いた自叙伝。著者はもともとライター志望でアマゾンでもコピーライター的な仕事をしたほか、アマゾン自身による出版社のアマゾン・パブリッシング、外国語のエンタメ小説を中心に翻訳出版するアマゾン・クロッシング、会計をせずに商品を持ち出して自動的に支払いができるコンビニのアマゾン・ゴーなどのプロジェクトに関わった。
過剰なワーク・カルチャーや創業者ジェフ・ベゾスへの個人崇拝、日常的な女性差別、そして次第に飲酒量を増やしていく著者といった感じのテック業界にありがちなエピソードとともに、少し前(アマゾン本社キャンパスが建設される前、アマゾン社が丘の上の精神病院跡や市庁舎の隣のビジネスビルなどに分かれていた時代)のシアトルの空気がよく出ていて、シアトル在住の自分にとっては少しノスタルジアを感じた。けどまあ一般の読者にはそんな思い入れはないでしょうねはい。次第にアマゾンがクラウド事業を含め社会的影響力を増し、取引業者への圧迫や物流センターでの労働者の酷使などが注目されるなか、その内部で働いていた著者がだんだん不満を膨らませていった様子が分かる。当時のアマゾンの内部という点でそれなりにおもしろく読めるけど、それを除けばまあ毎日オフィスに出社して仕事をしていたところ、ついに我慢できなくなって辞めた話。