Katrina “Trina” Taylor著「Da Baddest」
2000年代に大人気を誇ったマイアミ出身のラッパー、Da Baddest Bitchことトリーナの自伝。当時めっちゃ好きだったので読んだ。
当時はトントン拍子に売れていったし、その過程もリアルタイムで知られているので、あんまり新情報はなかったり。カリブ系移民の両親のもと育ち、ストリッパーとして働いて自分のセクシュアリティに自信を持つも家族バレして「お前の人生それでいいのか」と問い詰められ、堅実な仕事をしようと不動産仲介業の資格を取ろうとしていた時に音楽業界に関わり、そこから一気にスターに。
しかし当時女性ラッパーとして売れていた人はごくわずかだったし、多くの女性アーティストがそうであるように自分の性的魅力を売りにしつつ、他人に言われるままにせず自分のイメージや作品をコントロールしようとして高額の契約更新を蹴って独立したりと、ミッシー・エリオットやリル・キムらと並んで当時のフィメールラップ界をリードしたのカッコいい。そのミッシー・エリオットとの関係やボーイフレンドだったリル・ウェインとの関係などについても触れられているほか、二度の流産や家族を暴力犯罪で失ったトラウマなどについても語られている。
ところで上でも触れられているようにトリーナはストリッパーとして働いていたことがあり、パワフルな歌詞の内容(男を跪かせてそいつの口にわたしのコックをぶち込んでやる、というリリックとか!)もあって周囲のセックスワーカーたちのあいだで人気だったんだけど、本書を読むかぎり「ストリップはしていても自分で自分のセクシュアリティをどう売りにするかは自分で決め、きちんと線を引いているから、自分はほかのストリッパーとは違う」という意識が色濃く出ていて、ちょっと残念。そういうふうに自分に言い聞かせて自尊心を維持するのもそれはそれでセックスワーカーやストリッパーのリアルだとは思うけど、ほかのストリッパーを見下しているような感じがする。
ちなみに著者が最後にアルバムを出したのは2019年だけれど、もともとの予定どおり不動産仲介業の免許を取得したうえで、いまも新たな音楽プロジェクトも計画中。とおもったらウィキペディアによればプロレスのイベントに選手の応援ゲストとして登場して、応援していた選手が負けたあとヒールターン(悪堕ち)してその選手に攻撃したとか書かれてて、お金に困っているわけじゃないだろうになにやってんだと。