John B. King Jr.著「Teacher by Teacher: The People Who Change Our Lives」
オバマ政権で二人目の教育長官を務めた教育者・学校運営者による自叙伝。黒人とプエルトリコ系の教員家庭で生まれ、幼いうちに父を失いながらブルックリンで育った著者が、教師に認められ勉学によって機会を掴み、チャーター学校の設立やニューヨーク州の教育行政に関わり連邦教育省のトップに立つまでが語られる。
前任者のアーン・ダンカン(オバマがシカゴから連れてきた教育改革者で、生徒の成績によって教師を評価するなどして教員組合とバチバチ対決した人)や後任者のベッツィー・デヴォス(トランプによって任命された教育民営化論者で、マルチ商法アムウェイの創業者一族にして共和党の大手献金者)がそれぞれキャラ立ちすぎていて、そのあいだに挟まれた著者の印象がやたらと薄かったのだけれど、ちょうど学生ローン危機について書かれたJillian Berman著「Sunk Cost: Who’s to Blame for the Nation’s Broken Student Loan System and How to Fix It」で著者がどのように問題に向き合ったか読んだタイミングだったので興味を持った。
結論として、やっぱりあんまりぱっとしない印象。もちろんダンカンやデヴォスよりは印象がいいんだけど、それだけというか。アフロラティーノとして成り上がり教育長官になったのはすごいし、かれがチャーター学校にしっかりしたヴィジョンを持っているのも分かるけど、一般のチャーター学校が公教育の破壊と教育格差の拡大、教員の待遇の劣化にどれだけ寄与しているかを思うと、教師一人ひとりが生徒の人生を変えていくのだ、とまとめられてもねえ、と思う。学校運営者の立場としてならそれで良くても、教育行政をする立場の人が教師一人ひとりの個人的な資質に頼っていては困るんだけど。あと、せっかく本を出すなら、ダンカンの副官として働いていたときに見聞きしたことを暴露してほしかったw