Jane McAlevey著「A Collective Bargain: Unions, Organizing, and the Fight for Democracy」
長年労働運動に携わり、のちに労働運動研究をしている著者による、労働運動についての本。労働運動に対するさまざまな批判や誤解に反論しつつ、また、労働運動における人種差別や性差別などの問題点とそれに対する取り組みなども説明しつつ、リベラルな価値観を守るためにもっとも強力な勢力が歴史的にも現時点でも労働運動であることを力説。労組に対する古い認識(白人男性中心、癒着や汚職、その他)を変えるようリベラル層に訴える。一部の環境運動において、環境保護のための取り組みが石油産業や建設・重工業の雇用に与える影響を過小に評価したり、職を失う労働者のことを軽視する傾向についても批判的に取り上げ、環境を保護しつつ職を失う労働者たちが同等の仕事や収入や労組の保護を得られる職につけるような施策を求める。
最後の点についてはわたしが関わっている警察・刑事司法改革の問題にもあって、伝統的に白人男性だらけだった警察や保護観察の組織が近年非白人や女性の採用を増やしているのだけど、労使契約上それらの組織を縮小するとなったら後から採用された人から解雇することになるので、非白人や女性に負担がかかる。それをどうするかという話は警察改革の動きの中でも議論になっていて、そのあたりは環境運動における議論から学んだ感じ。まあ石油産業で働く人の多くは別に個人的に石油が大好きなわけじゃないけど、警察は力をふるうのが大好きな人が多すぎるという点は違うけど。