Hyeseung Song著「Docile: Memoirs of a Not-So-Perfect Asian Girl」
一攫千金を夢見て家族を連れて韓国からアメリカに移住を決めた父と、かれの身勝手な人生設計と男尊女卑的な価値観に振り回された不満を娘にぶつける母のもと育った韓国系アメリカ人女性による自叙伝。
五年間で億万長者になって韓国に帰国すると豪語していた父は法的にグレーな事業に手を出し失敗して破産に追い込まれたが成功を諦めず次々と新しい思いつきに飛びつき、巻き込まれた家族は貧困と父親の不在に苦しむ。著者自身、ほかにアジア系の子どもがほとんどいない学校で孤立し、やっと別の韓国系の生徒がいると思ったら全く趣味も見た目も違う彼女と混同されたうえに、「おとなしいけど勉強ができるアジア人の子」というキャラクターまで奪われ、いじめに近い扱いを受けることも。アジア系アメリカ人を「モデル・マイノリティ」として成功しているマイノリティ・グループだとみなすアメリカ社会のなか、ステレオタイプと現実の格差に苦しみメンタルヘルスに不調を抱える。
移民のパターンに漏れず勤勉で教育熱心だけどどこか外れている両親と世間の期待が重荷になって潰されそうになり、そこから自分を見つけて立ち直っていく、移民家庭で育ったアジア系アメリカ人女性の多くが共感できる内容。ていうかわたし的には「しかし普通だなあ」と思ったのだけれど、それはわたしの周囲に似たような状況で育った人が割と多いせいであって、一般社会的には十分に珍しくて興味深い話だと思う。