Hil Malatino著「Side Affects: On Being Trans and Feeling Bad」

Side Affects

Hil Malatino著「Side Affects: On Being Trans and Feeling Bad

トランスジェンダーに対する右派の政治的な攻撃は、それ自体がトランスの人たちの生きやすさを奪っているだけでなく、攻撃に悪用されないように配慮するあまりトランスであることの生きにくさを正直に語ることも難しくしている。たとえばトランス医療へのアクセスが十分に行き渡っておらず、しかもそれが常に攻撃に晒されている現状では、いまある医療への不満や、医療を受けても解決されないさまざまな問題について公に発言するのは避けがち。

本書はそうして隠されがちな当事者たちが感じるネガティヴな感情に注目し、トランス当事者によるアートや批評、非白人フェミニズムやクィア理論などを通して論じる。一応学術書なのだけど、全体的なまとまりはあんまりなくて、それぞれの章が独立したエッセイ的な感じ。いろいろな知らなかったトランスの論者やアーティストへの言及はおもしろかったし、非トランスの専門家によるトランス医療の歴史について書かれた部分も新たに学ぶことがあった。2022年の本だけど、明日著者に会う予定があるので慌てて一気に読んだ。