Erik Loomis著「A History of America in Ten Strikes」

A History of America in Ten Strikes

Erik Loomis著「A History of America in Ten Strikes

労働運動、とくに歴史上起きた10のストライキ(やストライキ群)を通して書かれたアメリカの歴史。まあところどころ勝利もあるし、長期的には良い方向に変わってきたんだけど、個々の運動を見ると敗北の歴史だなあと。著者が一貫して指摘するのは、歴史上の有名なストライキによって一時的に権利を獲得することがあっても、それを維持するのがいかに難しいか、そしてそれを成功させるには、労働者側かせめて中立の調停者の立場で関わる政権が必要なこと。

この本には労働運動が戦略的なミスだけでなく人種差別や移民排斥など倫理的におかしいものも含めてさまざまな間違いをおかしてきたことが書かれているけど、それは同時に教訓でもある。てか敗北の歴史を学ぶことはその点で重要。最後の章では、第三次産業における女性や移民やマイノリティの労働者を中心とした最近の運動の話がでてくる。この本はトランプ政権中の2018年に出版されたけど、よくある(某ひるびりーえれじー系の)白人労働者階層がどうという話に流れないのは、歴史をきちんと抑えているから。