Elijah Cummings著「We’re Better Than This: My Fight for the Future of Our Democracy」

We're Better Than This

Elijah Cummings著「We’re Better Than This: My Fight for the Future of Our Democracy

闘病しながら連邦下院の政府監視・改革委員長としてトランプ政権の数々の不正や腐敗の調査をリードし、2019年に亡くなったイライジャ・カミングス議員が晩年に大部分を書き終えていた原稿に、かれの死後起きたことの説明や葬儀での、かれが通っていた教会の牧師にはじまり、ナンシー・ペロシ下院議長、バラック・オバマ大統領、ビル・クリントン大統領らの追悼を加えた本。生まれ育ったボルティモアから政治に関わり、州議会議員を経て90年代から長年下院議員を努めた著者だけれど、2017年からはじまるトランプ政権との闘いがこの本の大部分を占める。

2016年の選挙でトランプがまさかの当選を果たしたあと、多くの民主党員がかれとの対決姿勢を示すなか、最初にトランプと面会したのがこのカミングス議員だった。かれはトランプが掲げていた「医薬製品の価格を下げる」という公約について協力を申し出、これを成功させれば偉大な大統領とみなされるだろう、とトランプに進言した。ところがトランプは公約を反故にしたばかりか、「カミングス議員は自分のことを歴史上最も偉大な大統領だと言っている」とあちこちで宣伝した。さらに議会によるトランプのロシア疑惑調査への妨害や、難民申請している家族をバラバラにし多くの子どもたちを動物以下の扱いで収容している件などで、本のタイトルにもなっている「われわれ(米国)はもっと良くあれるはずだ」というフレーズを連発して世間に知られるようになる。2018年の中間選挙で民主党が下院を奪還すると、カミングス議員は政府監視・改革委員長に就任し、トランプのさまざまな疑惑や失敗について調査をするようになる。

この間、カミングス議員がずっと闘病を続けていることは本人も認めているのだけれど、かれの死後にかれの配偶者が書いた最終章を読むと、かれの病状がかれ自身が明らかにしていたよりはるかに悪く、かれが死を覚悟しながら激務を続けていたことがわかる。大事な記者会見のために入院していた病院から4時間だけ外出する許可をもらって出ていったことも。トランプの疑惑を追求したせいで地元のボルティモアを「ネズミが這い回る気色の悪い街」だと中傷されたりもしたが、かれの尽力はかれの死後、トランプに対する一度目の弾劾に実を結んだ。

議員としては、ペロシ議長が持て余していたAOCら急進的な新人議員たちを自分の委員会に積極的に入れて育てたり、共和党側にも多くの友人を持つなど、多くの人が理想とする政治家のあり方を体現した人だったとして記憶したい。