Drew Afualo著「Loud: Accept Nothing Less Than The Life You Deserve」
ネット上で女性やクィアやトランスジェンダーに対する差別を拡散する人たちに鮮やかに反撃し嘲笑するスタイルで人気のインフルエンサーの本。TikTokについていけないわたしは初めて知ったけど、フォロワー100万人だそうでまさしく現代のフェミニズムを象徴する一人かもしれない。
本書の内容は個人的なエピソードを交えつつ、ほかの女性を押しのけて自分だけ抜け駆けして男性の注目を集めようとするのはやめよう、自分と周囲の女性たちを大切にして、期待された通りの生き方をしなくてもいいじゃん!的な、かつてのガールパワーっぽい感じの話が多い。いややっぱユーモアあふれるショート動画で女性やクィアやトランスの人たちを勇気づける能力と一冊の本としてフェミニズムを論じる能力は別だよね、とは思うんだけど、男性との関係からボディ・イメージからメンタルヘルス、結婚や出産をするかしないか、といった話題をテンポよく扱う手腕はさすが。
著者は自身の言葉によると「残念ながら」異性愛者で男性に惹かれるのだけれど、幼いころから仲が良かった一学年年上の姉はレズビアンで、そのことについて著者には苦い思い出が。なんでも隠さず話す関係だと思っていた姉がある時突然ガールフレンドと交際していることを明らかにして、それまで彼女がクィアであることも同性とのデートをしていることも知らされていなかった(しかも自分より先に母親にカミングアウトしていた)ことに不満を抱く。姉はそれを同性愛に対する反発だととらえ、「一緒のときは彼女の話はしないほうがいい?」とまで聞いてきたが、勇気を出して家族にカミングアウトした姉よりも自分の気持ちを優先してしまったことを著者は後悔し、それから著者は自分のような異性愛者女性だけでなくクィアやトランスの人たちのためにも戦うことを決意。
著者はサモア系だが、家族の話以外の部分ではサモア文化に関する話は出てこないし、セクシュアリティやジェンダー以外のインターセクショナリティの扱いは不十分に思えるけど、ソーシャルメディアでフェミニストがこうやって戦って支持を広げ、それで悠々と生活できているという事実は多くの人たちを勇気づけているのは確か。