Djamila Ribeiro著「Where We Stand」

Where We Stand

Djamila Ribeiro著「Where We Stand

ブラジルで2019年に出版されて反響を呼んだ黒人女性フェミニストによるマニフェストの英訳。原著は知らないけれど英訳本で100ページほどしかない短い本で、そのうち3割くらいは英語版に著者が寄せた前書きなのだけれど、実はその前書きが一番興味深い。

本文の内容的には、トニ・モリスンの小説をはじめソージャナー・トゥルースやオードリー・ロードなどアメリカの黒人女性たちの著書に影響を受けた著者が、その分析をブラジルの黒人女性たちに当てはめて論じるもの。一体何をやっているのかよく分からなかったボーヴォワール研究国際学会で認められて欧米のフェミニズムに触れ、数世紀に及ぶ黒人女性たちの声に共感してそれを広めようとブラジルで出版されたのが本書であり、短いのも研究者や学生たちだけでなく一般の黒人女性たちに広く伝えるという目的のためには納得がいくけれど、正直個人的にはもっとブラジルの黒人女性たちについての話を読みたかったという気持ち。

前述したように著者自身が英語版に寄せた前書きがめっちゃ面白い。本書だけでなく著者はポルトガル語で多数の書籍を出版するとともに、ほかの黒人女性たちと協力して黒人による本の出版を進めるプロジェクトを実施。読書クラブを全国に組織し、一定の需要が見込める状態を作り上げたうえで出版社に話を持ち込み、黒人女性の著書を中心としてブラジルの黒人たちによる本を多数出版・流通させることに成功している。すごい、カッコいい。本書に続いてそれらの本がこれから英語に翻訳されて出版されることを期待したい。いやいや期待するんじゃなくて読書クラブ作れよって彼女に言われそうだけど。