Charlotte Gill著「Almost Brown: A Memoir」

Almost Brown

Charlotte Gill著「Almost Brown: A Memoir

パンジャーブ生まれでシーク教徒の父とカトリック教徒のイギリス人の母のもとに生まれた著者の自叙伝。イギリスからカナダを経てアメリカのテキサスに移住した両親のもと双子の弟とその下の妹と育った著者は、白人でも黒人でもインド人でもない自身の外見と、インド・パキスタン分割前にイギリスの植民地だったパンジャーブで生まれ同じくイギリス植民地だったケニアで育ちイギリス植民地主義のもと「現地出身エリート」としてロンドンで教育を受けイギリス帝国主義の価値観を強く受け継いだ父親と、カトリックの白人家庭に育ちながら職場の病院で出会った浅黒い肌の男性と結婚し周囲をざわつかせた母親というユニークな背景により、自分は何者なのかという悩みを抱えた。

本書は著者の二冊目の自叙伝で、第一作は20年に渡って木を植林する仕事をしてきた経験について書いた「Eating Dirt: Deep Forests, Big Timber, and Life with the Tree-Planting Tribe」。それもあってか本書では自叙伝でありながら著者自身のエピソードより父親のエピソードが豊富で、まあその年代の男性としてありがちな身勝手さや保守性もめだつのだけど、テキサスで医者として働きながらイギリス帝国主義を内面化しテキサスで紅茶を優雅に飲むそのキャラクターがおもしろすぎる。かれの身勝手さもあり両親は離婚、著者は母親とともにカナダに戻って父親との関係はしばらく途切れるけれども、かれの晩年には再び繋がっていろいろ話をするようになる。本書の主役は明らかに父親。大きな展開はないけれど、ある複雑な人種・民族・文化のミックスを抱えた子どもが社会や親との関係をどう経験してきたかという話としてふつうにおもしろい。