Bruce Schoenfeld著「Game of Edges: The Analytics Revolution and the Future of Professional Sports」

Game of Edges

Bruce Schoenfeld著「Game of Edges: The Analytics Revolution and the Future of Professional Sports

マイケル・ルイスの「マネーボール」が最初に出版されて20年、映画化されてからも12年になる現在、テクノロジーとデータ解析がプロスポーツの世界をどのように変えてきたか振り返る本。野球、フットボール、バスケットボール、ホッケーのアメリカ四大スポーツにサッカーを加えたさまざまなプロスポーツで、選手の起用やゲーム戦略だけでなくチケットの料金設定から球場グルメ、地元のファンだけでなく世界市場に向けて発信するメッセージ、さらにはインターネット上のスポーツギャンブルとの関わりまで、それぞれのチームの経営者がどのようにテクノロジーとデータ解析を経営に取り入れているか広く紹介している。

もともとプロスポーツのチームは地元のビジネス界でスポーツとは無関係の本業を持ち成功した人が趣味半分、見栄や地域貢献半分で経営することが多かったが、テクノロジーで一発当てた人や高度な金融投資の専門家、中国の新興富豪、中東の石油王や王族などが参入することで、国際的な投資対象として最新のデータ分析に基づいた経営が広まってきた。しかしスポーツの世界は利益だけでなく勝敗という評価軸もあるほか、強いチームが弱いチームを破綻に追い込んだり吸収合併するわけにはいかないこと、消費者ではなくファンを増やし長期的な関係を築く必要があることなど、一般の企業間の競争とは異なる点も。

さらには、「マネーボール」以降のデータ革命により野球ではホームランと三振ばかりが増えダイナミックなプレイが減ったり、バスケットボールではスリーポイントシュートが増えバスケット下での攻防が減るなど、スポーツ自体の魅力が削られファンから飽きられる結果にもなった。球場の設計や座席の分布から売店の品揃えまでデータ解析に基づく「正解」が共有された結果、それぞれの球場独自の魅力や特徴がなくなっているという指摘もおもしろい。そもそも一部では、地域密着で成長してきたはずのチームがいまでは地元のファンよりむしろ中国でテレビ観戦している視聴者のほうが多いという事態にもなっていて、地域のチームという認識自体が時代遅れになっているのかも。