Amy Ettinger著「Sweet Spot: An Ice Cream Binge Across America」

Sweet Spot

Amy Ettinger著「Sweet Spot: An Ice Cream Binge Across America

アイスクリームについての本。2017年の本だけれど重いテーマの本を立て続けに読んでいるときにたまたま見かけてデザートとして読んだ。

アイスクリーム大好きな著者がいろいろなアイスクリームやその類似品の歴史を紹介しつつ食べまくるだけでなく、ペンシルヴァニア大学のフードサイエンス学部が開催しているアイスクリーム作りの一週間のセミナー(アイスクリーム屋を始めたい人や既に始めている人たちを対象としたもの)に参加したり、アイスクリーム好きにとっては興味深い話がたくさん。普通のアイスクリームだけでなくウィスコンシン名物フローズン・カスタードやアイスクリームサンドウィッチ、ジェラート、フローズンヨーグルトなどの変化球や、アイスクリームを売っているパーラーやうるさい音を鳴らして客を集めるアイスクリームトラックなど広く扱っている。

著者もわたしも衝撃を受けたのは、いかにも具材にこだわっていますみたいな手作り感あふれる高級アイスクリーム屋さんの多くが牛乳とクリーム、砂糖、卵黄を混ぜた「アイスクリームの素」を業者(最大手はこちら)から購入して、それにフレーバーを加えて販売しているという話。法的な定義のないジェラートとなると冷蔵不要で長期間保存できる粉状の「ジェラートの素」みたいなものまである。そんなの裏切りじゃん!と思う著者だけど、実際のところ材料を殺菌する装置がバカ高いし規制がガチガチなのでそういった「素」を使うのが合理的だし、安定しておいしいアイスクリームやジェラートを作ることができるらしい。なるほど。

本の最後で著者はシアトルのキャピトル・ヒルで、いつも行列ができている有名なアイスクリーム屋さんに行くけれどもサンプルしたところ期待した味でないので何も買わずにふらりと歩いていて、偶然知る人ぞ知る別の小さなアイスクリーム店を見つける。その店は料理界では名を知られた店主が近くの離島で飼育しているジャージー牛からとった牛乳から完全に自家製で作っているとわかり、著者はなんのフレーバーもつけていない「素」だけで作られたプレーンな究極にして至高のアイスクリームを食べる。え、そんな店あるの?食べてみたい!と思ったけれど、その店は2019年に閉店されていて、いろいろ残念。