Amia Srinivasan著「The Right to Sex: Feminism in the Twenty-First Century」

The Right to Sex

Amia Srinivasan著「The Right to Sex: Feminism in the Twenty-First Century

「21世紀のフェミニズム」というえらく大きく出た副題に負けない、フェミニズムとセクシュアリティについての刺激的な論考集。表題の「The Right to Sex」というのは、インセルを自認する22歳の男性がカリフォルニア大学サンタバーバラのキャンパスで6人を殺害、14人を負傷させた事件をとっかかりとして、誰も他の誰かにセックスの相手をするよう要求する権利はない、という当たり前の論理をふまえつつ、ラディカル・フェミニズムにおけるセクシュアリティの政治から人種的マイノリティやトランスジェンダーに対する欲望の政治などに議論を進めようとする、ネットで話題になったLondon Review of Booksの記事の再録

その有名な記事へのさまざまな反応に応答する「コーダ」に加え、Me Tooの時代における「告発される側」としての男性の脆弱性と「虚偽の告発」論について論じた「The Conspiracy Against Men」や、ポルノグラフィをめぐる80年代の「フェミニスト・セックス・ウォーズ」を振り返りつつインターネットポルノの時代に育った初の世代である学生たちとのポルノグラフィについての対話をまとめた「Talking to My Students About Porn」、大学の教員と学生のあいだの性的関係について、セクハラや不当な圧力、権力関係があるゆえの合意の危うさといった側面だけではなく教育の責任という面から論じた「On Not Sleeping with Your Students」、そして性暴力やDVに反対する運動が国家に取り込まれ性労働者のなかでもとくに立場の弱い人たちを追い詰めたり、他国への政治的干渉や軍事介入の口実となっている事実を批判する「Sex, Carceralism, Capitalism」と、それぞれ説得力があるエッセイが並ぶ。あまり(フェミニズムの歴史や理論を学んでいない)一般向けではないかなあという心配はあるものの、ここまでの話を読んで興味を引かれた人はぜひ読んで。

追記:邦訳「セックスする権利」2023年2月刊