Alexis Pauline Gumbs著「Survival Is a Promise: The Eternal Life of Audre Lorde」

Survival Is a Promise

Alexis Pauline Gumbs著「Survival Is a Promise: The Eternal Life of Audre Lorde

没後30年を過ぎたいまも多くの人たちに影響を与え続けている黒人レズビアン詩人オードリー・ロードの新しい伝記。

ロードが亡くなったとき著者はまだ10歳で、彼女が書き残したものや彼女を知る年上の世代から聞いた話で彼女について知ったと思われる。わたしもロードが亡くなったあと大学で彼女の本に触れ多大な影響を受けたので、ロードに対しては詩人であると同時に、フェミニズムのなかで人種差別と戦い、黒人運動のなかでホモフォビアと戦った戦士であり、誇らしく力強い女性という印象が強い。

のちに彼女自身が登場人物となる小説のかたちで書かれた神話的伝記(バイオミソグラフィ)「Zami: A New Spelling of My Name」や乳がんを患ってからの日記を元にした「The Cancer Journals」のようなより個人的な作品に触れても最初の印象が強く残っていたのだけれど、本書からはロードが生涯を通して悩まされた悪夢、長馴染で初恋の相手を自殺で失ったトラウマ、ジューン・ジョーダンやエイドリアン・リッチらほかのクィア女性たちとの交流と別離、その他彼女が一人の人間として経験したさまざまなことを思い出させてくれた。また、著者が乳がんの治療のため滞在した西ベルリンや晩年を過ごしたセント・クロイ島で過ごした時期についての話は以前のわたしは読み飛ばしていたのか記憶にほとんどなかったので、とても興味深かった。

ある意味、わたし自身が歳を重ねたことで、ロードが「既に亡くなった歴史上の偉人」から「少し先に生きて道を切り開いてくれた先輩・仲間」に変わるのを本書は後押ししてくれたとも言える。20年振りに「Zami」や、当時は読まなかった初期の詩集を読んでみようかなと思った。著者はロードと同じくカリブ海系の黒人クィア女性でディスアビリティ・ジャスティスにも関わる詩人・活動家であり、ロードがどれだけいまも尊敬されているかを思えば普通の作家にはおそろしくてとても手が出せるテーマではないけれど、書けるとすればこの著者を置いてほかにいないと信頼することができた。ちなみに数年前に出産した黒人クィア女性の友人が子どもにZamiっていう名前付けてた。