Adam Kirsch著「The Revolt Against Humanity: Imagining a Future Without Us」

The Revolt Against Humanity

Adam Kirsch著「The Revolt Against Humanity: Imagining a Future Without Us

人類「後」の世界を歓迎する二つの対象的な思想、人新世的反人類主義(アンソロポシーン・アンチヒューマニズム)とトランスヒューマニズムについての本。版元の「コロンビア・グローバル・リポーツ」というのは知らなかったけれども高級雑誌ジャーナリズムと本の中間を狙った短めの本を年に5冊前後出すためにコロンビア大学が作った部署らしく、まあほどほどの読みやすいボリューム。

反人類的な二つの思想は、人類がほかの生物や無生物に比べて特権的な立場にあることを否定し、人類のいない(あるいは人類の文明が消え去った)世界を歓迎する点では共通しているけれども、反人類主義が人類によるほかの生物や環境に対する負荷を無くすために人類が消え去った方が良いとする(この変形として、ほかの生物や無生物への負荷ではなく将来に生まれる可能性のある人類の不幸をなくすために生殖を停止しようとする反出生主義がある)のに対し、トランスヒューマニズムは人類が技術革新によって人工知能やそれによって拡張された新たな人類などより優れた知性のある生命や無生命にとってかわられる未来を希求する。これらの思想にコミットしている人たちは全体から見ると少数であるものの、それぞれのより穏健なバージョンである人類中心的な環境保護主義やテクノユートピア主義はそれぞれ学問的・社会的リベラル層やシリコンバレーのビジネスエリートを中心に支持を広げていて、そこからさらに反人類的な方向に一歩踏み出す人たちも増えつつある。

本書ではそうした反人類主義に反対する立場としてキリスト教的な人類中心主義の存在が指摘され、将来的には「人類後の世界」を見据えるリベラルエリートとトランプやブレグジットに象徴される右派ポピュリズムの対立が反人類主義と人類主義の対立に移行する可能性が指摘される。いやいやなに言ってんの?と思ったけど、まあこれだけコンパクトな本で二つのあんまり馴染みのない思想の潮流について学べたのでまとめ部分のやっつけ感は我慢することにする。