Adam Jentleson著「Kill Switch: The Rise of the Modern Senate and the Crippling of American Democracy」

Kill Switch

Adam Jentleson著「Kill Switch: The Rise of the Modern Senate and the Crippling of American Democracy
長い任期と1/3 ごとの改選、各州に均等に割り振られた議席数などの仕組みによってポピュリズムへの安全弁として設計された上院が機能不全に陥るまでの歴史。多数決の原則の枠内で少数派にも討議の機会を与えていた上院内のルールが、両党の議員の支持を受けていた公民権法成立を数十年遅らせるなど奴隷制擁護論者や人種隔離論者によって悪用され、ほぼあらゆる法案がたった一人の匿名の議員の反対によって阻止できる現在のフィリバスターに変形してきた。共和党のミッチ・マコネル上院院内総務によって完成された現在のルールにおいては民主党と共和党のどちらもほとんど重要法案を通すことができないけれど、保守は司法や行政を握れば自分たちの主張(政府の縮小)を大方実現できるのに対し、リベラルが求める変革は立法を必要とするので不利。

著者は民主党のハリー・リード院内総務の元スタッフで、モルモン教徒であり口下手で大人しい印象のあるリードが党内トップに上り詰めた裏にあった豪腕伝説(ネヴァダのカジノからマフィアを追い出して命を狙われたりとか)がすごい。