Alex Schultz著「Click Here: The Art and Science of Digital Marketing and Advertising」

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Alex Schultz著「Click Here: The Art and Science of Digital Marketing and Advertising

フェイスブックの運営会社メタの最高マーケティング責任者(CMO)によるデジタル・マーケティングについての本。だけど見てこのクソダサなタイトルと表紙。とにかく大きな緑色のボタンにClick Hereと書けばユーザはクリックしてくれるよ、という話なんだけど、本の表紙でそれは無理だろ…というか表紙をクリックされても意味ないし。こんんなの著者がメタのCMOでなければ誰が手に取るねん。わたしももちろん、メタのCMOだから読んだだけで、内容自体には全然興味がない。

著者はメタにおいて人種や性別、年齢、居住地域といったデモグラフィック情報にかわって行動情報に基づいた広告を表示する行動ターゲティングを推し進めた人らしい。行動ターゲティングとは、人が何をクリックしたか、どのコンテンツに目を留めた(ように見えた)か、どうマウスのポインタを動かしたか、といった人々のネットでの行動を細かく収集して分析し、その結果に応じた広告を表示する。メタが行動分析に利用するすのは、フェイスブックやインスタグラムなどメタ傘下のサイトにおけるユーザの行動だけでなく、ブラウザのクッキーやサイトに埋め込まれたピクセルなどによって収集された、その人がアクセスする多数のサイト全てにおける行動が含まれる。

ユーザのことは知れば知るほど良い、として著者は際限ない行動データの収集とそれに基づくコンテンツの個人向けカスタマイズを勧めるが、のちになってあんまりやりすぎるとユーザにキモいと思われる危険もあるのでカスタマイズはそこそこに、とも言う。しかしユーザがキモいと感じる原因であるユーザの行動情報の徹底した収集自体は擁護。また、行動情報に基づいた広告を表示する際、どうして自分がその広告にターゲットにされたのか疑問に思うユーザもいるので、その理由の一部だけも開示すれば、ほかに開示されていない理由があったとしてもユーザは納得してくれる、とも言っていて、コイツラの言う透明性というのはまったく信用できねーなと。

さらに本書では、序章で「成長は文句なく良い」と宣言したうえで、成長をもたらすのは有効なマーケティングであり、したがってヨーロッパが導入しているようなプラットフォーム企業による個人情報保護やプラットフォーム規制の動きは間違っていると力説。本文中でもときどきメタを含めたソーシャルメディア・プラットフォームを通した情報収集やその利用が社会的問題となった例にもいくつか触れるが、そのたびに規制はするべきではない、ソーシャルメディアは競争が激しいのでユーザを蔑ろにするような経営戦略を取る企業は存在しない、と言い切る。いやいや全然説得力ないんだけど、そんなので最高マーケティング責任者やってられんの?って思った。