Zara Shah著「Nonmonogamy and Sex Work」

Nonmonogamy and Sex Work

Zara Shah著「Nonmonogamy and Sex Work

ノンモノガミーについての短い本のシリーズの最新刊で、ノンモノガミーとセックスワーク(性労働)についての本。これまでこのシリーズでは「ノンモノガミーとニューロダイバーシティ」と「ポスト・ノンモノガミー」の2冊を紹介してきたけど、それらよりさらに本書は短い(約50ページ)。

ノンモノガミーと性労働は特定の一人以外の相手とのセックスに開かれているという意味では共通点があるけれど、その実態や意識は大きく異なる。多数の客と性的関係を持つセックスワーカーの多くはそれをノンモノガミーだとは考えないし、考える理由もない。しかし著者を含め仕事としてセックスワークをしながら私生活でもノンモノガミーを選ぶ人もいるし、特定の一人だけを性的な相手としない点で世間からの偏見に晒されたり、性的同意や性感染症予防について入り組んだコミュニケーションが必要となるなど、重なる部分もある。そしてセックスワークには、世間の偏見だけでなく逮捕・処罰という、私生活におけるノンモノガミーにはない危険もあり、著者はノンモノガミーの読者に対してセックスワーカーへの連帯を呼びかける。

シリーズの他の本同様、あっという間に終わってしまうほど短い本だけど、ノンモノガミーとセックスワーカーの連帯を考える出発点にはなりそう。ただわたしが本当に読みたいのは、ノンモノガミーとセックスワークという「似て非なるもの」の組み合せじゃなくて、「まったく正反対に見えて実は通じている(かもしれない)」アセクシュアリティとセックスワークの本なんだけどなあ。