Whitney Barlow Robles著「Curious Species: How Animals Made Natural History」

Curious Species

Whitney Barlow Robles著「Curious Species: How Animals Made Natural History

海のいきものが好きなわたしが表紙を見てジャケ買い(図書館から借りたけど)した、「長い18世紀」における自然科学の発展と、クック船長らによる当時の「新世界」への植民地主義的航海とそれに伴う人種概念の発達が、そうした航海で「発見」された動物種の研究との関連を論じる本。

本書ではさまざまな種が取り上げられているけれど、主役級なのはクック船長の船を座礁しかけたサンゴ、アメリカ大陸で多くの植民者や測量者を噛んで毒で殺したガラガラヘビ、そしてペットとしてヨーロッパに持ち帰られてブームを起こしたアライグマの3つ。「分類学の父」と呼ばれるカール・フォン・リンネにより生物の分類と階層化が進められ、最も「進歩した」ヒトをトップとした(その上に「天使」を置く人もいた)生物のヒエラルキーとともに、白人をトップに置きアフリカの黒人を最下層に置く人種制度も完成するなか、最下層の生物であるはずの小さく弱々しいサンゴのポリープが骨格を生み出し海中に大きな構造物を作ることに、当時の研究者たちは自分たちが信じる生物と人種の階層が否定されたような衝撃を受けたし、ガラガラヘビはいまでもティーパーティー運動に採用されているガズデン旗に見られるようにアメリカ独立のシンボルとなり、また可愛らしく人に懐くアライグマは食べ物を洗うような行動の意味や手の構造がリンネらによる階層を脅かした。

また本書には、著者が植民者たちがこれらの動物と出会った土地を訪れるたり、立体的な魚の皮を平面に保存するための歴史的な手法を(日本の魚拓も含め)実際にやってみるなどのレポートも含まれている。どれだけいるか分からないけど、動物と植民地主義や人種主義の歴史の両方に興味がある人にはおすすめ。サンゴはすごい。