Vivian Nixon & Daryl Atkinson編「What We Know: Solutions from Our Experiences in the Justice System」
刑務所に収監された経験を持つ人や、今も刑務所に収監されている人たち23人が寄稿した、刑事司法制度や刑務所をどう改革すべきかという提言エッセイ集。一つ一つのエッセイは短いけれど、それぞれの人の具体的な経験に基づいた提言は、野心的というよりごく現実的でむしろ物足りない印象すらあるけど、実際にそれを経験した人だからこそ思いつくものが多くて学ばされる。
たとえば、刑務所の中の人がディベートチームを作って大学のディベート大会に参加できるようにしろ、という提言とか、本来ありそうな「釈放されたあと仕事を見つけられるように大学の授業を受けさせろ、卒業できる機会を与えろ」という要求に比べると控えめだけど、いっぽう各地の大学のディベート大会で刑務所のチームが活躍すれば、かれら自身の自信につながるだけでなく、将来の政治・経済のリーダーになる学生たちに与える影響もありそう。
ほかにも、識字教育や生活に必要な一般常識のクラスを開いてくれ、将来の仕事や生活に必要なIT技術に触れさせてくれ、釈放後ホームレスにならないような取り組みを支援してくれ、など、現実的かつ妥当な提言ばかりで逆に驚くくらい。刑罰を廃止しろ、中途半端な改革に誤魔化されるな、的なことを言う人がわたしの周囲には多いんだけど、こうした提言にもちゃんと耳を傾けて、できることから応援していかないと。