Tae Kim著「The Nvidia Way: Jensen Huang and the Making of a Tech Giant」
パソコンの部品の1つを作っている会社だと思ってたら、いつの間にか人工知能(AI)ブームに乗ってアップルやマイクロソフトと並んで世界で最も時価総額が大きい企業の一つとなっていたNvidiaと創業以来CEOを務める台湾系アメリカ人ジェンスン・フアンについての本。
わたしがNvidiaという会社についてはじめて認識したのは、DOOMシリーズをはじめFPSゲームが流行りだした頃、どこの会社のグラフィックボードが良い、とか周囲の人が話しているのをたまたま聞いたことがきっかけ。当時も今もハードコアゲーマーではないわたしは同社についてとくにどうとも思わなかったのだけれど、ここ数年その会社が世界有数のテクノロジー企業としてのし上がっていることを知りどうなってるんだと思っていたので、ちょうど良かった。
本書の内容的には、フアンやほかの創業者たちがどういう人物で、どのように会社をはじめたのか、どういう危機があり潰れそうになったのか、どれだけ社員を追い込んで結果を出させたのか、どんな幸運があったのかといった感じの話で、まあ普通。そりゃあれだけ成功した会社なのだからそれなりに有能な技術者や経営者がいたのだろうし、先見の明があったのだろうし、運も味方につけたのだと思うけど、著者がフアンとNvidiaを称賛しすぎてちょっと冷めた。成功した例だけ見ればそりゃ成功しそうな要因がたくさん見つかるだろうけど、同じ要因を持っていても成功しなかった人や企業はいくらでもあると思うの。
Nvidiaがいまのようなトップ企業に上り詰めた直接のきっかけは、コンピュータグラフィック用の計算をするために設計されたGPUを科学的シミュレーションなどの研究に流用しようとした研究者たちにGPUをバラ撒いたりツールを提供したこと。GPUは安い買い物ではないけれど、スーパーコンピュータに比べれば圧倒的に安く高度な計算を行うことができるので、研究費が足りていない研究者たちはそれに飛びつき、またNvidiaもかれらの声を聞いてグラフィック以外の計算にも使いやすいような設計を行った。まあそれがハマったと思うと今度はより高性能なバージョンを出して安価なGPUの購入制限をしたりして研究者から搾り取ろうともしたんだけど、そうやって自滅する前にAIブームが到来し、AIのトレーニングに必要な高度な計算に使えるGPUとツールを持つNvidiaが一強に。
ま、だからなんだという話なんだけど、昔周囲のオタクが貶していたあの会社がどのようにして生き返ってここまでデカくなったのか、というのは分かった。CEO在任最長クラスになったフアンが退任後のNvidiaがどうなるか、という話とかは、正直どうでもいい。