Ruha Benjamin著「Imagination: A Manifesto」
テクノロジーと人権や人種平等との関係についての第一人者で、これまでにも「Race After Technology: Abolitionist Tools for the New Jim Code」や「Viral Justice: How We Grow the World We Want」といった重要な著作のある著者の新作。タイトルのとおり、すべての人が自由に、そして理不尽に苦しめられずに生きられる社会を実現するために必要なイマジネーション(想像力)について書かれた短い本。
いまある社会を批判するだけではわたしたちが望む未来には繋がらない、わたしたちがどういった社会を求めるのか、まずはそれを想像する必要がある、と訴える著者。しかしかつてトニ・モリソンが「あらゆる理想郷、あらゆるユートピアは、そこに誰がいないか、誰が排除されているかによって設計される」と語ったように、すべてのイマジネーションは対等ではない。著者がとくに警鐘を鳴らすのは、技術の進歩による問題解決を目指すテクノユートピア主義や、はるか未来の人類のためと称していまここにいる人たちを見殺しにする長期主義倫理など、いわゆるTESCREALと呼ばれる思想群。これらの思想が形を変えた新優生主義を抱えたイマジネーションであることを指摘する本書は、短いながらテクノロジー社会論と人種主義を専門とする著者ならではの力作。これからも注目していきたい論者の一人。