Rafia Zakaria著「Against White Feminism」

Against White Feminism

Rafia Zakaria著「Against White Feminism

最近出たばかりの本だけど、米軍がアフガニスタンから撤退しタリバンが全土掌握した今読むべき本。白人フェミニズムとは白人女性によるフェミニズムという意味ではなく、白人中心主義に基づいたフェミニズムのこと。著者はパキスタン出身の弁護士・人権活動家で、大学に通わせてもらえるという条件で見知らぬパキスタン系アメリカ人男性と結婚するためにアメリカに渡りDVを経験した経歴を持つ人。アフガニスタンやパキスタンの例を含め、以前紹介したKoa Beck著「White Feminism」よりも豊富な国際的な実例をあげている。もし自分がパキスタン系のDV夫に殺されれば文化的な理由のある「名誉殺人」と認識されるが白人女性が同じように殺されても個人の犯罪として処理される、という指摘ははっとさせられた。

米軍によるアフガニスタンやイラクへの侵攻だけでなく、現地の女性たちの地位を向上させるためとして行われるさまざまな国際援助や開発が白人フェミニズムにより設計され現地の女性たちのためになっていない例も多数。また、2011年には米軍がパキスタンの山奥でビンラディンを探索するために、国際援助機関と協力して、B型肝炎ワクチンを打つためと称して医師をビンラディンが隠れている可能性があるとされる村に潜入させ、DNAサンプルを収集した。結局その時はビンラディンは見つからなかったけれど、米軍の作戦が知られた結果、現地では医療関係者がタリバンに襲撃されたり、ワクチン接種を拒む風潮が広がり、結果としてその地域ではポリオやほかの十分防げるはずの感染症が蔓延し、とくに子どもや女性が苦しんだ、という話は恥ずかしながら初耳。女性の解放のためとして白人フェミニストたちが支持した戦争が、このような結果を生み出した。

米軍のアフガニスタンからの撤退は、ブッシュからバイデンまで両党の大統領4政権の敗北であるだけでなく、女性解放の名目を米軍に託した白人フェミニズムの敗北でもある。アフガニスタンやその他非先進国の女性たちと連帯していくためには、白人フェミニズムを倒す必要がありそう。