Michael Ryoshin Sapiro著「Truth Medicine: Healing and Living Authentically Through Psychedelic Psychotherapy」
ケタミンやMDMA、シロシビン(マジックマッシュルームの有効成分)などの幻覚剤を使った心理療法についての本。著者は心理カウンセラー・ライフコーチとして活動しており、これらのうち現時点でもアメリカで合法的に行えるケタミン援用心理療法を実際に行っている。
タイトルの「truth medicine」というのは、幻覚剤が普段人々が自分を守るために身に着けている自己の殻を取り除き、自分自身を見つめ、本当に自分が感じている感情やありたいと思っている自分に向き合うことを指している。もちろんそうした殻はわたしたちが生きていくうえで必要なもので、カウンセラーが悪質な人だった場合は何をされるかわからないし、常に真実の自分自身であり続けることはできないけれど、幻覚剤の助けを借りることで殻を取り払って自分自身に向き合うことは、とくにトラウマによって厚い殻を何重にも抱えてしまった人にとって、とても重要。
わたしの知り合いにもこれらの心理療法を行っている専門家やそれを受けた人が何人かいて、心理療法についての本書の内容はだいたい納得がいくもの。ただ著者は有名なビジネスリーダーやスポーツ選手、アーティストらのライフコーチとしての仕事もしていて、かれらの話を共感的に聞いた結果、金持ちも本当は辛いとか実際にはいい人だとかいう話が何度か出てきて、まあそりゃ金持ちだって人間的な苦しみはあるだろうと思うけど、より直接的に多くのトラウマを経験して苦しんでいる人たちにはこうした心理療法には資金面からも社会資本的にもアクセスできず、生き延びるために身近で手に入る違法な薬物に手を出して体を壊したり処罰を受けていることを思うと、金持ちの多くは本当にいい人だなんて言われても知らんがなって。