Paula Lehman-Ewing著「Reimagining the Revolution: Four Stories of Abolition, Autonomy, and Forging New Paths in the Modern Civil Rights Movement」
刑務所に収容されている人たちやその家族らを繋げかれらの声を届ける月刊新聞「All of Us or None」の編集者をつとめていたジャーナリストが、刑務所の内外で監獄廃止のために戦う人たちやグループについて取り上げた本。
監獄廃止を訴える本はこのところたくさん出ているけど、実際に刑務所に収容されている人たちが書いた本は多くない。あたり前のことながら刑務所はそもそも本を書くのに適した環境ではないし、書いたものを外に出すにも検閲や嫌がらせがあって難しい。刑務所に収容された人たちに多くインタビューし、刑務所から投稿された手記や手紙や絵画・漫画などを多数掲載していた新聞の編集者だった著者だからこそ、それらを紹介しつつ自分の目で見てきた刑務所の実態を告発できるし、作者の許可をもらい、報酬も支払って、かれらのアートを本書に収録することができた。監獄廃止を主張するほかの多数の本に比べた本書の価値は、著者が長期にわたって刑務所の中にいる人たちとの関係を築き、かれらに自分たちの声を届けることを任せられるようになったことに起因している。
また本書は、刑務所内で戦っている活動家たちとともに、Critical Resistanceをはじめとする多数の刑務所外での取り組みも紹介し、それらについてとても丁寧に扱っている。ただし、ブラック・ライヴズ・マター国際ネットワークに取材を申し込んだときはちょうどBLM創始者の一人に対する不正の言いがかりなどが右派メディアで騒がれていた時期で、白人女性である著者は信用を得られなかったと書かれている。まああのときのBLMGNはネタ目当てに寄ってくるジャーナリストについて個別に審査する余裕とかなかったと思うし仕方がないのだけれど、ジャーナリストがプロフェッショナルな距離を保ちつつ取材対象とのあいだに信頼関係を築くことがどれだけ重要なのかが、うまくいった例とそうでなかった例で示されているのがおもしろい。
一言不満を言うともっと刑務所の中にいる人たちが作ったアートが見たかったけど、それは多分別の本でってことだと思う。あとAll of Us or Noneを定期購読すれば毎月アートが掲載されてるしね。