Nathan Grayson著「Stream Big: The Triumphs and Turmoils of Twitch and the Stars Behind the Screen」

Stream Big

Nathan Grayson著「Stream Big: The Triumphs and Turmoils of Twitch and the Stars Behind the Screen

ゲーム実況を中心に人気を博している動画配信サイトTwitchの歴史とそこで活躍したストリーマーたちについての本。

Twitchは世界有数の人気サイトだけれど、ゲーム実況にしてもそれ以外でもストリーマーに興味が持てない(あとtwitchはガチャガチャしすぎててついていけない)わたしにとっては知らない世界。紆余曲折を経てゲーマーやストリーマーたちの信頼を得てサイトは勢いを増すけれども、ストリーマーたちの競争は激しく、YouTubeやTwitterなどほかのソーシャルメディアと比べてレコメンデーションシステムが弱い(だから変な方向に誘導されたり押し売りされたりしない)Twitchではひょんなことから偶然バズることは少なく、毎日何時間も話を続けながらストリームしなければすぐに人気が落ちて収入が減るという激戦区。おまけに毎日それだけ話をしているせいでファンたちがいつの間にかストリーマーのことを親友であるように錯覚してしまい、ストーキングされたり粘着される危険も。ゲーマーゲート事件に象徴的なゲーマーコミュニティのミソジニーと合わせて、とくに女性やクィアなストリーマーにはとても厳しい世界。

そして多くのストリーマーやリスナーがついたところで、Twitchはアマゾンによって買収され子会社になったが、短期的な増収を求めるアマゾンからの要求によって広告が増やされるなどいわゆる「エンシティフィケーション」が進み、一部のユーザが離れることに。またソーシャルメディアクリエイターたちが特定のソーシャルメディアだけでなく複数のサイトに参入することが当たり前になると、ストリーマーたちにTwitchだけで独占配信するよう求める方針が足かせとなり複数サイトでの配信を認めるようになるなど、変化は続いている。

著者は多数のストリーマーたちに対する取材をおこなっており、なかでも女性や黒人、クィア&トランスのストリーマーたちの声を大きく取り上げているのはプラス。特に日本以外では当時まだほとんど知られていなかったVtuber的なアバターを導入した女性の部分はとくにおもしろかった。取材を受けたなかにはかつて多数のファンを得て成功したけれどもいろいろ問題を経験して引退した人もおり、成功経験だけでなく成功に伴う闇の部分も紹介されている。