Marcus J. Moore著「High And Rising: A Book About De La Soul」

High and Rising

Marcus J. Moore著「High And Rising: A Book About De La Soul

ギャングスタラップに代表されるマッチョなヒップホップシーンの流行に背を向け、独自の路線で人気を博した伝説的ヒップホップグループ、デ・ラ・ソウルについての本。メンバーの一人であるDaveが昨年亡くなったことを受けた追悼の書でもある。

著者はケンドリックについての本も出している音楽ライターだけれど、関係者へのインタビューを通してあまり知られていない事実を掘り起こすというのではなく、デ・ラ・ソウルのキャリアとともに著者本人の半生を振り返りつつ彼自身、そして社会に対する影響やその意味について論じるスタイル。代表作であるデビューアルバム「3 Feet High & Rising」や代表曲「Me Myself and I」から来る陽気で軽いイメージが張り付いてしまっているデ・ラ・ソウルだけれど、一作ごとに新たな要素を取り入れ変化し続けたせいで、大ファンである著者自身ですら「このアルバムはちょっと…」と感じてしまうこともあるくらい。

デ・ラ・ソウルの革新性は、ヒップホップにとどまらないさまざまなジャンルを混ぜ合わせ、力を入れたスキット、原曲が分からないほどの革新的なサンプリングに加え、レコード会社との対立からくる自らのアルバムの不買運動、インターネットでのアルバム一日無償配布やクラウドファンディングによる新作制作など、音楽の内容だけでなく制作面でも多々あった。本書でも触れられているけれど、日本でのツアーで知り合った高木完さんとスチャダラパーをフィーチャーした楽曲「Long Island Wildin’」はアメリカのメジャー音源にはじめて(何の説明もなくいきなり)日本語ラップが収録されたものらしく、その点でも実験的。ただし高木さんはともかくスチャダラパーのBoseさんとANIさん何やっとんじゃおい(聴いたらわかるけど、長い時間かけてニューヨークに来てスタジオに呼ばれたけど5時間も待たされた、なにかラップしろと言われた、というだけのラップなんだけど、デ・ラ・ソウルの曲に客演してそれ?という…それがカッコいいの?誰か教えて!)。