Madeline Pendleton著「I Survived Capitalism and All I Got Was This Lousy T-Shirt: Everything I Wish I Never Had to Learn About Money」

I Survived Capitalism and All I Got Was This Lousy T-Shirt

Madeline Pendleton著「I Survived Capitalism and All I Got Was This Lousy T-Shirt: Everything I Wish I Never Had to Learn About Money

180万人のフォロワーを持つTikTokの「スーパースター」という触れ込み(知らんけど)の著者による自叙伝にして、資本主義を生き延びるための実用的な金融リテラシーの本。

カリフォルニア州フレズノの貧しい地域で生まれ育ち、営利目的の私立大学や給料を誤魔化す雇用者らに搾取され、ようやく小さな会社を経営している年上の男性と愛し合う関係担ったと思ったら会社が倒産し、従業員を露頭に迷わせたことを苦にしたボーイフレンドは自殺。たかがお金のためにこんなに苦労したり愛する人を殺されることに納得がいかないまま、経済について学ぼうと金融リテラシーの本を読み漁り、そこで学んだことと資本主義に批判的なパンクの精神をミックスさせ、2008年の金融危機・2020年のコロナ危機という二度の大きな経済的ショックを経験した同世代(ミレニアルやZ世代)の仲間たちに向けて書かれた本。

クレジット(信用)とは何でどうやったら増やせるのか、クレジットカードなど借金をどう返済するか、生活費のやりくりは、安く学校に通うには、職に応募するには、住居を賃貸するには、家を買うには、と、著者本人がたくさんの失敗や苦労を重ねて学んできたお金の知識が分かりやすく説明されている。「世の中はこうなっている」と説明しつつ、その馬鹿らしさや不公平さについてもはっきりと語り、生きていくために必要な嘘は悪ではないといくつか法的には怪しいライフハックも披露。いろいろあって自分のアパレル会社を設立した著者は、自分が最初に投資したお金はもう取り戻した以上、経営者だというだけで労働者が生み出した富を自分が吸い上げる理由はないとして、従業員全員が同じ給料で働き、会社の経営が苦しくなったら全員で何を削るか議論できるような経営方針を実践。もちろんオーナーである著者がそう言っているというだけで、もしかしたら社員は不満を持っている可能性はあるものの、資本主義を生き延びるにはそのルールに従わなければいけない事実を認めつつ、自分や従業員の価値をそこに全面的に預けてしまわないようなパンクな経営を行っている。

バーニー・サンダースが若い人たちの支持を集めたように、経済的な仕組みを大きく変革しようと考える若い人は少なくないけれど、それでもみんないまの仕組みのなかで生きていかなくちゃいけない。わたしTikTokは見ないしこの著者についても知らなかったけど、さまざまな困難を経験しながらリアルに資本主義を生き延びる知恵を生み出そうとしてきた著者が人気を博しているのだとしたら納得できる。