Julian Aguon著「No Country for Eight-Spot Butterflies」
チョモロ(グアム先住民)でクィアの人権弁護士・環境活動家の著者によるエッセイ集。
米国の海外領土でありながら大統領選挙に参加する資格がなく一人だけいる連邦議員は決議に参加できない地位に置かれているグアムは、面積の1/3を米軍基地により占拠され、沖縄に駐留する米軍の縮小にともなってその規模はさらに拡大しつつある。基地による直接の環境破壊はもちろん、チョモロの人たちにほとんど責任がない地球温暖化によって島の気候は乱され、先祖代々の大切な土地が海中に沈んでいる。そこで育つ子どもたちは自分たちのことを自分たちが決められるという実感を得られず、諦めが蔓延する。
本書はそうした状況に置かれたグアムで、先住民の自治権とこれからも自分たちの島で健康に生きていくために必要な環境を守るために戦ってきた弁護士・活動家が自身の生い立ちとチョモロの人たちが置かれた政治的状況を絡めつつ書いたエッセイを集めた短い本。それぞれのエッセイも短めで、20章に対談を加えてもたったの128ページだけれど、エッセイの締めが絶妙でなにかが足りていないというわけではないのだけどもっと読みたいという気持ちをずっと抱き続けてしまった。みんなに読んでほしい。